return to contents...


ブラックアウト


 女の甘い泣き声が、耳をくすぐる。それはとろけるような響きで脳に滑り込んできて、背筋を抜けて俺の腰を撫でさすり、否応なく昂らせた。されるがままの女は、柔らかなふくらみを擦りつけるように身をよじっている。上気した肌は薄赤く染まり、より色濃い赤みが指先に見え隠れした。

 暗い部屋で、彼女の肌だけが輝いて見える。身を離すと、女は媚びた目で上目遣いにこちらを見た。汗ばんだ額に髪がはりついている。厚めの唇が動き、もっと、と悩ましくかすれた声を上げる。

 ベッドに横たわった女は、自分から、大きく膝を割った。もちろん、何も身にまとってはいない。足の付け根、女の体の中心は潤んだ口を開けている。まだ触ってもいないのに、太腿まで濡れていた。そこがどんなになっているか、耳元で囁くと女は恥じらってさっと顔を背けた。もっと恥ずかしがらせたい。足首をつかんで引き上げると、女は俺の望み通りの、甘い抵抗を見せた。

 足を上げたままにして、片手だけ下ろし、中央に指を沿わせてみると、簡単に飲み込まれた。中はすっかりとろけている。指を二本に増やしても御同様だ。難なく飲み込み、締め付けてくる。

 眉根を寄せて、いや、だめ、と女は言う。男なら誰だって知っていることだ、それは歓喜の言葉に過ぎないことを。その証拠に、女は自ら腰を揺らしていた。まだ足りない、もっと奥まで、とでも誘うように。

 すっかり屹立した塊を突き刺すと、女は一際高い声を上げて背を反らせた。腰を押さえ、加減なしに輸送する。女はシーツを強く握り締め、輸送に合わせて甲高い声で喘いだ。甘えた猫のようだった鳴き声は、もっと獣じみたものに変わっていた。  ぬるついた強い摩擦。俺は動きを抑えることができなかった。勢いに任せて、このまま、一気に、破裂するまで――。

 しかしその瞬間を迎える直前、唐突に点った室内灯の明るさが全てを止めた。何が起きたのか考えるよりも先に、彼女の姿を隠そうと、俺は反射的に手を伸ばしていた。手の中の熱は、行くも退くももはや自分では選べなかった。

「……ほどほどにしときなさいよ」

 呆れた母親の声に俺は振り向くこともできず、ただ暗転したパソコンのモニターに映る己の情けない顔だけが視界を埋めていた。







  了








return to contents...