さようなら。大好きだったわ。

 でもあなたは、私を好きじゃなかったでしょう?

 一度だって、あなたは私を見てはくれなかったもの。

 でも、いいの。

 もう、あなたはいないから。

 だから、あなたは、もういいの。

 私は念入りに細切れにした彼を流し終えると、体をきれいに洗って風呂場を出た。今までに感じたことのない爽快感があった。

 服を着て、髪を乾かす。そして私は出掛ける準備を始めた。

 あと、もう一人。

 彼女はどんな表情を見せてくれるだろう? 脳裏に彼の最期の表情が浮かび、私はつい微笑んだ。

 全ての仕度を終えた私は、鞄に包丁を忍ばせ、部屋を後にした。






  エピソードACA 「あと一人」









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