return to start...

 さようなら。大好きだったわ。
 でもあなたは、私を好きじゃなかったでしょう?
 一度だって、あなたは私を見てはくれなかったもの。
 でも、いいの。
 もう、あなたはいないから。
 だから、あなたは、もういいの。
 私は念入りに細切れにした彼を流し終えると、体をきれいに洗って風呂場を出た。今までに感じたことのない爽快感があった。
 服を着て、髪を乾かす。そして私は出掛ける準備を始めた。
 あと、もう一人。
 彼女はどんな表情を見せてくれるだろう? 脳裏に彼の最期の表情が浮かび、私はつい微笑んだ。
 全ての仕度を終えた私は、鞄に包丁を忍ばせ、部屋を後にした。


エピソードACA
「あと一人」

return to start...

Copyright(C) 2006 GiNGETSUDO