それは、涙だった。硬質的な私を溶かすような、押し殺してきた想いを洗い流すような、一雫。その一雫は歯止めを決壊させ、次々と頬を濡らして流れ落ちていった。
大きく息を吸い込み、そして吐き切る。何度か繰り返していくうちに周囲は少しずつ静まり、私の呼吸音と鼓動だけが聞こえた。最後の一雫が流れる音さえも聞こえそうだった。
私は、私と生きていこう。私と、この体と、付き合っていこう。
自分にすら愛されないなんて、悲しすぎるから。
私は明日、彼に別れを告げるだろう。それでいい。一人にならないと見えてこないものはたくさんある。これ以上彼といると、私は私を駄目にしてしまう。
一人になろう。私が私を愛せるようになるまで。
いつか誰かと一緒にいられる日々に、淡い淡い夢を見ながら。
エピソードABA
「私を愛して」
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