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「信じ……たいよ……」
 息が熱い。涙がこぼれる。私は、私の内にある熱さを、どこにぶつけていいのかわからくなっている。
 私は、何に対して怒っているんだろう? 何が悲しくて、こんなに苦しいんだろう?
「私は、佑司を、信じたいよ」
 そう言ったきりうつむき、押し黙る。次々に流れ落ちる涙が邪魔をして、声を出すことができなかった。
 そして、ふと、影が射した。
 目の前に、佑司の顔があった。唇に温かい感触があり、体の奥がじんわりと熱を帯びるのを感じた。
 佑司の閉じた瞼から伸びる睫毛が、とてもきれいだった。
 私は目を閉じ、全身で佑司の体温を感じた。名前が呼びたくて、でも呼ぶには離れなければいけなくて……そんなジレンマさえも心地好かった。
 唇を離した佑司は体を少しだけ引くと、足元にある鞄から小さな箱を取り出して見せた。
 私の掌に、小箱が乗せられる。とても小さくて、とても大きい感触。
「今日子」
 佑司の声が、降ってくる。
「俺と、結婚してくれないか」
 心臓が、深く鳴った。
「もう、苦しい思いなんかさせないから。必ず、幸せにするから。だから……俺と、結婚してくれ」
 佑司は透き通った目で私を見つめている。
 私は黙った。黙って――頷いた。
 信じてみよう。勇気を出して、信じてみよう。
 私は、佑司を、信じたい。
 それが私の、本心からの望みなのだから。


エピソードAAA
「私はあなたを信じたい」

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