それは、もはや何の意味も持っていなかった。見飽きた表情に聞き飽きた台詞。彼はいつも同じことを繰り返す。

「俺は、おまえだけだよ。わかるだろ?」

 実際のところ、わかっていないのは彼の方だった。何度も同じことを言い、何度も同じ過ちをする。いつもそうだ。いつもいつもいつもいつも――。
 だから、わからせてやったのだ。自分の言うことの意味を、自分の体で。その瞬間、私の首筋を一滴の汗が流れ落ちた。

 かれこれ何時間になるだろうか。私は何時間もかけて、私のものになった彼を、刻んでいる。もう彼は、彼を形を成してはいなかった。

 脂で切れ味の鈍った包丁を時折洗いながら、私は彼に話しかける。

 あなたが悪いのよ。

 あなたが嘘を吐くから。

 あなたが私の人生を食い潰すから。

 ねえ、言ったでしょう?

 あなたは私のものなのよ。

 窓を開けてはいたが、ひどい臭いが風呂場に満ちていた。それでも後悔はなかった。私は後悔の仕方がわからなくなっていたから。

 私は彼の破片を、

  A.排水溝に流した。
  B.握り締めた。