それは夜とは限らなかった。朝も昼も夜も関係なく、彼は私を求めた。私の、体を。そして私は冷や汗をかくのだ。

 私は自分の手首を見つめた。三日前の昼の行為の時に彼につけられた痣が、まだ薄らと残っている。青黒い痣。こんなことになるのなら、あの時耐えずに振り払えばよかった。

 彼とは、もう無理だろう。元々、彼とは相性が悪かった。彼はいつも乱暴にするから。

 私は、優しくされたかった。そのせいで、女に手を上げるような男に無謀な期待をかけてしまった。

 そして私は、理想と現実の狭間で、自分を慰める術を覚えてしまった。

 以来、私は自分の体に触れる時はいつも吐き捨てたいほどの嫌悪感を感じる。しかしそれでも私はその行為を止めることができない。誰かに優しく抱かれることを夢見ながら自分の体の内に指を挿し入れる時、私はえも言われぬ快感を覚える。それは次第に病み付きになってしまった。

 私は適当に、適確に、自分への愛撫を繰り返す。吐き気をこらえながら、自分を消し去りたいと思いながら。

 私は、優しくされたかった。こんなふうに、優しく触れて欲しかった。もっと、もっと――。

 息が、熱かった。私は体から手を離し、目をつぶった。一秒が数日にも感じられるような孤独感が、私を襲う。

 気が付くと、

  A.頬に冷たい感触があった。
  B.手に冷たい感触があった。